ナレッジベースから適切な記事をおすすめしてくれる!ZendeskのAnswer Botを使ってみた
オペレーション部 江口です。
弊社ではユーザーサポートにZendeskを利用しており、その機能を活用してお客様により良いサポートを提供できるよう日々改善に努めています。
さて、そのZendeskのプロダクトの1つに「Answer Bot」というものがあります。 このプロダクトを利用すると、ナレッジベースによる顧客自身での問題解決をサポートすることが期待できます。 日本語にも対応したということなので、サンドボックス環境で試してみました。ということでちょっと紹介してみたいと思います。
Zendesk Answer Botとは
<https://www.zendesk.co.jp/answer-bot/>
名前の通りZendeskのボットサービスです。
ただ、いわゆるチャットボットとは少し性格が異なります。このAnswer Botの主な機能は、顧客が問い合わせを送信する際に、その問い合わせに近い既存のナレッジベース(Zendesk Guideに作成された記事)を紹介する、というものです。
※Web Widgetと組み合わせることでチャットボットっぽく動かすこともできます。詳しくはZendesk公式の記事参照。
どんな風に動くか先に紹介
AnswerBotがどんなものかは上記の説明の通りですが、実際の画面をお見せしたほうがイメージがつくと思うので、検証に関する説明をする前にスクリーンショットを紹介しておきます。Webフォームから顧客が問い合わせを行う場合の動きです。
- 顧客は通常どおりWebの問い合わせ画面で情報を入力します。
- まず件名を入力すると、この時点で関係があると思われる記事の候補が表示されます。
[2020/4/30訂正] こちらの件名による推奨の機能はAnswerBotと異なりZendesk標準の機能(「おすすめの記事」表示機能)でした。こちらの機能の説明は公式のドキュメントをご参照ください。
- 次に本文を入力して、問い合わせの送信を行ってみます。
- 問い合わせを送信すると、さらに3つに絞り込まれたおすすめの記事が表示され、これらの記事で疑問が解消されないかを確認します。
- 顧客がリンクから記事を確認すると、「この記事で疑問が解消されますか?」というダイアログが表示されます。顧客が「はい」を押せば問い合わせは解決したものとしてクローズされます。
- この確認の結果はフィードバックされ、Zendesk側に蓄積されます。あとでこうした情報をレポートで確認することも可能です。たとえばZendesk提供のレポーティング製品であるZendesk Exploreでは以下のようなレポートが確認でいます。
上記ではたとえば問い合わせを解決した率(Resolution rate)や実際に解決した問い合わせの数(Resolutions)、提示した記事がどれくらい実際にクリックして確認されたのか、といった情報が表示されており、FAQの品質向上に役立てることができます。
検証した環境
さて、利用イメージについて掴んでいただいたところで、ここからは検証環境や設定について説明していきたいと思います。 検証環境については、すでに前述したように、Zendeskのサンドボックスを利用しました。サンドボックスってナニ?という点についてはZendesk公式の記事をご参照ください。
サンドボックスでの変更のテスト(Enterprise) – Zendeskヘルプ
AnswerBotがナレッジベースについては、本番環境のZendesk Guideに掲載している記事をAPIでエクスポート/インポートして移行しました。実際どんなスクリプトを作成したのかを書くと長いので割愛しますが、Zendesk公式記事内の、記事のバックアップについての情報などが参考になるでしょう。
Backing up your knowledge base with the Zendesk API – Zendesk Develop
ともあれ、この移行により、サンドボックスでも本番と同じ記事を利用したAnswer Botの検証を行う環境が整いました。
なおAnswer Botは有償のサービスとなります。今回の検証はトライアルを申し込んで実施しています。
設定
Answer Botの設定はかなり簡単で、どこで有効化するかを設定するだけです。 いまのところ、メール、Webフォーム、それにすでに紹介したWeb widgetでの問い合わせに対応しています。
とりあえず、一番簡単なWebフォームでの問い合わせで機能を有効にしてみました。 Webフォームの場合、チケットフォーム(入力フォームの組み合わせの定義)ごとに有効/無効を設定します。ためしに「Answer Bot検証用フォーム」という専用フォームを作ってみたので、そちらのフォームでのみ有効化してみます。設定手順は下記の通りです。
- Zendesk Supportの「管理」メニュー -> 「ビジネスルール」 -> 「AnswerBot」へ移動
- 「Webフォーム」タブに移動
- 「Webフォーム」の項目で「Webフォームチャネルが無効」となっている場合は有効にする(下の画像の「1」)
- 「アクティブなWebフォーム」の項目で、対象とするフォームを選び有効にする(下の画像の「2」)
各フォーム名の横にある「設定とテスト」をクリックすると、後述のテストやラベルによる記事の絞り込み設定を行うことができます。記事の絞り込みは、あるフォームでの問い合わせの場合に対象となるナレッジベースの記事が限られる(特定のカテゴリやセクションの記事だけ出てくれば良い)場合などに使えるでしょう。
テスト
Answer Botを有効化したら次はテストです。冒頭で紹介したように、顧客のアカウントからチケットを作成してみることももちろんできますが、「件名と本文をいれるとどんなおすすめ記事が出てくるか」については、有効化をした設定画面から直接確認してみることもできます。
- Answer Botの設定画面「アクティブなWebフォーム」の各フォーム右の「設定とテスト」をクリック
- 「件名」「説明」にテストの文章を入力し、「おすすめの記事を表示する」をクリック
クリックすると、Answer Botが提示するおすすめ記事の情報が出力されます。
スクリーンショットのとおり、テスト用にインポートした既存FAQから推奨される記事が表示されました。
TIPS: 推奨されやすい記事を書くコツ
Answer Botは自動的に記事を確認し、問い合わせに対して推奨できるものを選定します。
上述のテストの例では、比較的類推しやすい件名・本文を入れたこともあり、推奨された記事の候補もおおむね期待されたものが出てきました。しかし場合によってはうまく期待した記事が推奨されない可能性もあります。
なるべく的確な記事が推奨されるようにするには、記事自体の内容をAnswer Botが的確に解釈できるよう見直したほうが良いようです。推奨されやすい記事を書くにはちょっとしたコツがあるようで、ZendeskではAnswer Botに記事を最適化するためのプラクティスを公式のナレッジベースで公開しています。
紹介されていることを簡単に箇条書きしておきます。
- Answer Botはまずタイトルを調べるため、タイトルを分かりやすくする
- 質問の形にするか、シンプルな文章にする
- 記事の論点は単一にする。たとえば手順を示す記事、問題の解決を目指す記事は分ける
- Answer Botは記事の最初の75語を重視するので、記事の最初にイントロダクションを付けるのが良い
- 画像などには代替テキストをつける
- チケットを作成する際に顧客をセグメンテーションできる場合(たとえば、iOS開発者かAndroid開発者かなど)、記事にラベルをつけることで話題を絞ることが有効
テストでうまく記事が推奨されない場合は、こうした記事の見直しを行ってみるのが良いと思います。
おわりに
以上、ZendeskのAnswer Botについて簡単に紹介させていただきました。
Answer Botを活用するには、ナレッジベースの記事の拡充、場合によってはその見直し、といったことがまず必要とはなってきます。しかし、それによって ナレッジベースを顧客により活用してもらい、結果としてオペレータに来る問い合わせを減らす効果が期待できるので、サポートを担当する側としてはなかなか嬉しいサービスかなと思います。日本語でも利用できるようになったこの機会に、Zendeskをサポートに利用している会社の方は検討してみると良いのではないでしょうか。